読んでもいない本をネタに

 まあそれは余りにバカなことで、話はすぐに逸れて行きます。
 『1Q84』は大騒ぎになるほど売れていますが、読書巧者を自任する方々の書評は芳しくないようです。村上春樹は僕も一目置いている(悲しいかな、「ファンです」と言えるほど読めていない)作家で、新作が出れば気になります。今は個人的には、無性に『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を再読したい。そしてその勢いで『海辺のカフカ』に行きたい。と思っています。その前に4冊読んでしまわないといけませんが。
 読んでもいない作品の批評に言及できる訳もないのですが、ご批判の中に展開が遅すぎる(ひいては、そもそも無用に長すぎる)と仰っている方がおられました。なんとなくわかるような気がします。本作とは関係なくなるのですが、そこからつらつらと考えたのは、展開の遅さ、というのも、今どき小説にはあっていい特色ではないかな、ということです。
 今はなんだって「テンポ」最優先です。無駄なく、スピーディに。何にもそういうことが求められている気がします。音楽。映画。お笑い。「頭がいい」ということさえ、そういうことだと考えられがちです。それがちょっと僕には面白くない。いや、もちろんテンポのいい作品は面白いですけど。何でも「無駄」「無駄」って切り捨てて行こうとする社会って、なんだかつまらないです。それに怖い。だから、せめて小説という古典的な表現媒体くらい、中にはテンポの悪いのがあっていい気がします。ぐる〜っと遠回りして、じっくりとテーマに対峙していくような作品。それに、あせることなくじっくり付き合うような読書をしたいなあ。『1Q84』がそんな作品ならいいな、と思っています。