手品か

ロングモーンの1975

 bar main maltに行けば、ベンリアックから新たにリリースされた「2005ヘビーピーテッド」が飲めるだろう、と踏んでいたら、案の定でした。これは現オーナー、ビリー・ウォーカー初のボトリングということで、熟成たったの3年! しかもごっついピートがかかっている! ということで自分で買うつもりはなかったんです。
 いただいてみると予想に違わず、いや予想以上に辛い! アイラモルトもびっくりです。ただ熟成の浅さゆえの荒さではないところがすごい。それにしてもこりゃ一杯空けるのもつらいなと思っていたらマスター、「加水したら甘くなるんですよ」と、加水用の水を出して下さった。まあそんなこともあるかと思って水を足してみると・・・・これまた驚愕! 本当に甘い! これぞベンリアック本来の風味だよ、という甘みが、さっきまでの強烈なピート香より先に広がって行くではないですか。「これは手品か!」すげえヤツです、本当に。これなら自分で1本持っててもいいかなあと思わせられるくらい。とてもじゃないですが3年しか熟成してないとは絶対に思えません。そりゃそうと、確かスコッチウイスキーは最低5年は熟成しないと「ウイスキー」とは名乗れないのではなかったでしたっけ? じゃこの旨いのはウイスキーではないのか・・・・。
 なんてことを思いながらあっという間に空けてしまうと、マスター今度は「このロングモーンは飲みはりましたっけ?」と、日本のボトラーズであるスリーリバースのボトルを出して来て下さった。おしゃれといえばおしゃれなラベル。古臭いウイスキーファンならちょつと眉唾に感じるかもしれないデザイン。しかしこれがまた! すっきりしているようで濃厚、後口は強いて言えば超高級キャンディー。僕がウイスキーに求める一番理想的な味と香りを備えているではないですか! マスター曰く「ベンリアックもびっくりですわ。そら第二蒸留所に甘んじるはずや。ロングモーン本気出したら怖い、ちゅうのがよう判りますわなあ」。二の句がつげません。(ロングモーンとベンリアックは兄弟蒸留所です。)
 このボトル、百本ちょっとしか存在しないそうで、このお店にもこれ1本しかない。飲んでみてからもう1本買っておくべきだったとマスター後悔されたそうです。ネットオークションでは既に4万近い値がついているとか。まあ、それも納得してしまうくらいの味でした。きっと同じ1975年蒸留の33年熟成のロングモーンでも、同じ味にはならないのでしょう。というところも、これもまたウイスキーの魔術といったところですねえ。