さらば、リトルミルよ

最後のリトルミル

 ウチに置いてあったリトルミルの8年ものがとうとうなくなった。この蒸留所は活動を停止してしまった。そしてこのいかにも古めかしい緑のボトルも、もう市場には流通していない。
 バー・メイン・モルトのマスターの言を借りると、「ほんまに(樽ではなくて)ダンボールで熟成させたんちゃうかと思うくらい」の個性のキツい味でつとに有名なモルトだった。かと言って不味いのかというと決してそうではなく、実はクセになる旨さなのだ。ただ、毎日気軽に飲めるかというとそうではなく、手を出すにはそれなりの気合いが要る。おもしろいとわかっていても、おいそれとネオ・リアリズモの白黒映画に手を出せないのに似ているかもしれない。
 決して華があるといえないこのB級の味を、忘れないでいたいと思う。まだとこかのバーで出会うことがあるかもしれない。