ジェイソン・ボーン三部作

このお姉ちゃんどんどんいい役になって


 この映画シリーズの生みの親ダグ・リーマン監督は、1作目『ボーン・アイデンティティー』を長い年月の粘り強い交渉で映画化権取得の末映像化に漕ぎ着けたにもかかわらず、製作会社の再三の圧力により何度も撮り直しを強いられた結果、結局ただ1作を世に送り出してこのシリーズから身を引いてしまったそうだ。ところが作品が大評判になって続編制作が決まり、生みの親(監督)以外のスタッフ・キャストでついに3作目、完結篇まで辿り着いた。これが「シリーズ最高」の呼び名が高い。やっぱり後任の監督選びが成功したからなのだろう。ダグ・リーマンの「リアリティ重視」「ドキュメントタッチ」という方向性を、更に強化した観のあるポール・グリーングラスの演出・編集は暴力的でさえある(でも実際は猛烈に緻密に計画されてのことなのだろうが)。数秒とじっとしていないカメラワークと編集は、劇映画としては類を見ないのではないか? でもそれが作品に命を吹き込んでいる。凄い。だがこの3作目は1、2作目あってこそこれだけ全力疾走できた。作品も中盤になって前作『ボーン・スプレマシー』のラストと繋がり、そして随所で初作とリンクする。ニッキーが逃亡のために髪を染め短くした時にその顔がマリーとシンクロした瞬間はどきりとした。そしてラストは1作目のオープニングに戻ったかのような構図に。
 それにしても成功の秘訣はストイックさにほかならない。これだけの大資本とビッグネームの俳優を使ってよくインディーズ的な作りを貫けたものだ。ハリウッドのアクション映画でこんなリアル感に遭遇できるとは。どんどんと進化していった稀有の人気シリーズであった。