バーのグラス

憧れのグラス

 バーのグラスってどうしてあんなに透明なんだろう。磨けば磨くほど綺麗になるのだろうか。バーならではの楽しみというのはいくつもあるけれど、グラスについては何よりあの美しさがいい。「バーだな」という感じがする。形や大きさも店によっていろいろで、店オリジナルのグラスで出してくれるところもある。家でもついグラスというのは増えてしまうもので、ウチの場合頂いたものにもとてもいいものが多いから目移りするくらいだ。
 それでも格好いいグラスを目にすると、ズバリそのものとは言わなくても「そんな感じの」が欲しくなってくる。実際にバーに行き出したのは最近だから以前はもっぱら映画の中でだったけれど、アメリカ映画などで見るあの登場人物がひと息に「カッ」とやるショットグラスは、なるべく装飾のないシンプルなもので、底の厚いやつを探したものだ。これが意外とない。同じく映画でこれはバーのシーンではないけれど、ほぼ真四角なオールドファッションド。「ブレードランナー」でハリソン・フォード演じる主人公が自宅で飲んでいた。これはたぶんこの近未来映画のためにデザインされた小道具なのだろう、とうとうイメージに合うものは見つからなかった。
 雑誌の中のバーの写真に写り込んでいた、どこかアードベッグのラベルの装飾文字の「A」を想起させる素敵なグラス。これは実はバカラのグラスだった。なぜわかったかと言うと店先でみつけてしまったから。「正にそのもの」に出会うことなんて、これまでの経験で滅多にないこと。素晴らしいことにその店はメーカー品を格安で売っている店だった。
 写真でグラスに入っているのは、もちろんアードベッグです。