ウイスキーのロマン(酒噺③)

217本中の35本目ですと

ウイスキーのロマンと言えば、なんといっても蒸留に長い長い時間が必要だということでしょう。新しく稼動を始めた蒸留所も、結果が楽しめるのはどう少なく見積もっても5年後であります。いろんな蒸留所で(中には停止してしまった蒸留所も含めて)、たくさんの樽が長い年月を経て世に出るのを待っております。何年寝かせるか、どんな樽で寝かせるか、どんな環境で寝かせるか、で、どんな味になるかは全く違ってきますし、それはまたどんなプロにも予測しきれないものなのです。これをロマンと呼ばずしてなんとしよう。
そして、当然、僕が生まれたと同じ年に蒸留されたウイスキーというのもあるのです。1968年蒸留。これは是非飲んでみたいよなあ。と、ウイスキーの好きな方なら誰しもが思うことでしょう。しかし、ビンテージものは高い。酒税改定ですっかり安くなった「洋酒」ウイスキー、あれやこれやと贅沢言わなければ日本酒よりもよっぽど安価に手に入る昨今です。それが、20年だ30年だという熟成酒となると、1万2万3万4万・・・・正に天井知らずであります。1968年蒸留のシングルモルトも勿論ないではないが、まあ夢のまた夢であるわけです。
ところが、いや、酔っ払ってインターネットをぐるぐるやるのは本当にいけませんな。その夜僕がこいつを見てしまったのは、本当に何かの間違いであったとしか言いようがありません。ボウモアの1968〜2005。37年熟成。しかも1968年の2月の蒸留ですよ。僕の誕生月だ。ボウモアは、久し振りにちょっと熟したのが欲しいなあ、と思っていたのです。17年をシカタさんから頂戴したミニボトルでちびっと口にしたことがありましたが、あれが美味かった! ので。しかし、誰が37年ものを買えと言ったか。値段はですね、いや、とても申せません。今の我が家の経済状況から言いますと、狂気の沙汰ですよ。とても嫁には明かせません。しかし、酔った勢いとはいえ注文はしてしまったのだ。
ボウモアは、アイラのモルトとしては地味な方だと思うんです。強烈な個性ということでは、普段はアードベッグ、カリラ、ラフロイグといった蒸留所のものの方を優先して楽しんでいます。が、このボウモアモルト独特の深みというのがあるのですね。それが37年寝てるんですよ! 実際味わってみますと、これが流石と申しますか、ボウモア、地味なんですね、やっぱり。最初のひとくちは実はピンと来なかった。が、試しに若いアードベッグを一口飲んで「やっぱり好きだなコレ」と思いつつ再び件のボウモアを飲むと・・・・すげえよ、やっぱこれ! 深い! 間違いなくやっぱりアイラのモルトなのだけど、この軟らかさは! 凄かったです、やっぱり。でもとんでもない酒買っちゃったよお。これ、どんな時に飲めばいいの?