職人ニッポン

長原親子のペンクリニック

さっきメシ食いながら横目で見てたテレビの話。
マツダがフォード傘下になってますが、そのフォードグループでマツダロータリーエンジンが採用された。
ロータリー式というのは今や世界的にマイナーな存在で、最初に出された開発費は桁違いに低かったそうだ。これでは新たに製造ラインを設置するのは無理。30年以上前からのボロっちいラインを再利用するしかない。しかし設備は恐ろしく時代遅れ。精度はこれまた恐ろしく低い。基準を満たす新型ローターがどうしても造れない。しかしマツダとしては、伝統のロータリーエンジンで是非勝負したい。そこで立ち上がったのが熟練工。彼らの長年の経験と技術に裏打ちされ、みごとミクロン単位の調整のもと新製品は作られ、世界規模のフォード傘下で広く採用されるに至った。
「プロジェクトⅩ」みたいなすごい話。
でも、これあくまで定年間近の熟練工あっての話なんだよね。後継者はいるのか? この古い製造ラインは半ば忘れられていた存在のようだったが。
どこの世界も似たような状況のようです。技術立国たるわが国の、その技術を引き継ぐ世代が育っていない。IT全盛の現在、「職人の技」はもうはやらない。しかし、それで失われつつある文化がどれほどあるんだろう。
万年筆の世界もそうだ。造り酒屋もそう。いま女性に支持されて焼酎業界は元気だが、日本酒の方は斜陽の一途。しかし、海外を見回して、国のオリジナルの酒が失われつつある国ってあるのかな? わかんないけど。
靴は若い職人が台頭しつつあるようだが、これは本の知識なので現場の感触はわからない。まだそんな話が伺えるような方を持たないので。


我がセーラー万年筆の職人長原師は、子息がその技を受け継ぎつつある。最近はペンクリニックもお二人でまわられている。ただ、子息はペン先よりも軸の方が得意のようだ。そりゃ得意分野は人それぞれだよな。あの神業のようなペン先創りと調整は、やはりもう望むべくもないのか・・・・。
長原親子によるペンクリニックが、今月28、29、30日と神戸ナガサワ文具センターで開かれる。